序話 ロクと隠れアジト



 隠れアジト……それは、レイヴン同士の情報交換の場であり、憩いの場である。また、規模もかなりのものだ。隠れアジトは、地下に建造されたものであった。当然、入り口は地上に存在する。半球型の建物にAC出撃用の入り口が多くあり……加えて、人が通れるくらいの小さな入り口が一つ存在した。地下の構造がどうなっているかというと、分からない。エリアに分けられ、エリアごとに住居が存在し……どのエリアにも、種類、数ともに同じ施設が存在する。周辺の施設のみで十分に生活でき、他のエリアに行く必要はないため……全ての施設を利用したことがあるものはいないだろう。地図はあるが、度重なる構造の変化によって大昔のものとなってしまっている。頭の中に思い浮かべるしか、全体の構造を把握する方法はなく、誰も知ることはできない……そう、ただ一人を除いて。
広大な隠れアジトの全体像は、たった一人……隠れアジトの管理者のみが知っていることであった。

「さて……と、そろそろ物資が届く頃でしょうかね……」

一人の男の声が、部屋に響きわたる。 多くの機器で埋め尽くされた、小さな部屋……そこに、彼がいた。彼の名は……『隠れアジト』を知るものであれば、誰もが知っているだろう。 そう……彼の名は、ロクである。ロクは、隠れアジトの管理者であり……今は、隠れアジトのリニューアル作業をしていた。
ロクは、とても疲れているようだ。あくびをし、ゆっくりと伸びをする。そのとき、ふいに……ロクがいる部屋の扉が開かれ、一人の青年が入ってきた。

「ロクさん、物資が届いたよ!この物資、どこに保管しておけばいい?」

その青年は……部屋に入ってくるなり、そんなことを言った。
彼の名は、オルク……十八歳ぐらいのレイヴンである。青き瞳に、銀の髪……ほっそりとしつつもひきしまった肉体を持つ。また、顔もよく、いわゆる美男子と言えた。隠れアジトに来て一年にも満たない人物ではあったが、レイヴンとしての活動は三年にも及ぶ。隠れアジトに来る前は、企業の専属レイヴンとして活動していたのだが、なぜか……二年前にやめてしまい、今は隠れアジトにいるのだった。若いながらにかなりの実力者であり、企業の専属レイヴンであった時も、かなりの信頼がおけるミッション成功率を誇った。そんな彼は今、隠れアジトのリニューアルに向け……物資の輸送をする、列車や車の護衛をしていた。

「ああ、第二倉庫にでも入れておいてください……第一倉庫はもういっぱいだったはずですから」

ロクが、淡々と返事をする。ロクの目は、パソコンのディスプレイに向けられていた。パソコンのディスプレイに映るものは、隠れアジトの全体図である。パソコンで、隠れアジトのリニューアル後の構図を作成しているのだ。これの作成によって、必要な物資が明らかになる。オルクが護衛していた列車や車に積まれていたものは、現段階で必要になると分かっているものだった……それは、高エネルギーを生み出すためのものである。現段階で予定されている、リニューアル後の隠れアジトは……以前から使用しているようなエネルギーだけでは、活動を続けれそうにもなかった。それゆえに、強力なエネルギーを生み出せる物資を用意する必要があった。

「了解……ただちに運び込みます」

そう言って、オルクは部屋を出て行った。 このとき、オルクはもちろん、ロクでさえも……このあとに起きる事態を予想してはいなかった。いや、予想できなかったという方が正しいかもしれない。その事態になる原因が、隠れアジトに届けられた物資にあるということも……もちろん、知りえるはずがなかった。


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