第三話 ライバルその一

今日もメイはレイヴンズアーク内の自分専用のオペレーター兼ミッションルームに足を運んだ。
この部屋はオペレータールームとミッションルームに分けられている。
手前から右側がオペレータールーム。オーグが【エスペランサ】に通信を送る部屋。
左側がミッションルーム。ここは依頼の事やミッションの作戦等を話し合う部屋である。
どちらの部屋もオーグはまだ来ていないようだ。
メイは少し考えてミッションルームのパソコンデスクに座り込んで依頼数を確かめた。

「今日も依頼はこの一つか。」

パソコンの画面には一つの依頼通知が来ていた。
内容はこうである。



依頼主:キサラギ
依頼開始時刻:01:42
契約金:12000c
成功報酬:84000c
依頼内容:ミラージュの兵器開発工場を襲撃して欲しい。
     我が社のスパイが確認している敵勢力はミラージュ製の警備用MTが3機、戦闘ヘリ5機である。
     もしミラージュ側についているACの存在も確認すればACも破壊して欲しい。もしACを発見し破壊してくれればその分の報酬額も加えよう。



「報酬金額は多いけど危険なミッションになるかもしれないという訳か…。」

ボソッとメイは言葉を吐いた。
メイは依頼内容を何度も見直し考えた。
(もしこの依頼を受けたとしてもまたMTのパイロットを殺すという事になるのか?)
(でも俺はレイヴン…。この成功報酬はオイシイ…。)
(俺はこのまま依頼を断っても良いべきなのだろうか?)
色々考えている最中に後ろから肩を叩かれメイは後ろを振り向いた。

「よう。」

オーグだった。

「何も言わずに肩を叩いたらビックリするじゃないか。」

メイは本当にビックリしたみたいだった。
オーグはそんなメイを気にせず答える。

「だってメイが集中してパソコンの画面見てたからついつい なっ♪」

「ついついって全く…。」

メイは呆れた様に言ったがオーグは悪気はなさそうだった。

「で今日の依頼はいいの来てたか?」

「キサラギからの依頼だけだよ。」

オーグはニヤニヤしてから言った。

「じゃあその依頼受けようぜ。」

オーグはそういうとすぐさまパソコン画面を見て

「報酬金額悪くないじゃん。よしこれに決定ね♪」

と言いながらメイからパソコンのキーボードを奪い取り依頼を承諾してしまった。

「おい!何勝手にやってるんだよ?」

怒るメイにオーグはなだめる様に答えた。

「まぁまぁ。今、【エスペランサ】は結構貧弱だろ?だからこの金で新しい武装やパーツでも買おうって考えよ。」

それ答えにメイは反論した。

「それはあくまで依頼を成功したらって話だろ?もし今の武装で敵ACに出くわしたらどうするんだよ?すぐやられるかもしれないだろ!?」

「大丈夫だって。メイは初ミッション無傷だったんだぞ?絶対成功するって。俺のサポートもある事だしな。」

「ったく!調子いいなオーグは…。」

メイは呆れてそれ以上何も言わなかった。
オーグのその自信過剰なところはいつも頭が上がらない。

「はぁ。」

「絶対上手くいくよ。」

メイは呆れてた顔で悪気のなさそうなオーグを一瞬睨んでからミッションルームを出ていった。

「おーい。何処行くんだよ?」

メイはオーグの声を無視し、その声は空しくミッションルームに響くだけであった。





メイはガレージに足を運んでいた。
そしてすぐにメイは【エスペランサ】のコックピットに座ってくつろいでいた。

「今日もオーグの奴が勝手に依頼を承諾しちゃったよ。」

「エスペランサはどう思う?」

「………。」

「機械のお前が話せるわけないか…。」

「はぁ。」

メイは一人で【エスペランサ】に話しかけていた。言葉が返ってくるはずもなく…。
そこにコムが来た。

「よう。コックピットに乗って何しとったんや?」

メイは慌てて返事をした。
「あ、コムさん。お疲れさまです。今日も整備ですか?」

「今日はちょっと違う用事なんや。ちょっと降りてくれへんか?」

メイは「何だろう?」と思いながらACのコックピットから降りた。

「どうしたんですか?」

「ちょっと紹介したい奴がおってな。おい、出てこんかいな。」

コムの後ろから子供(中学生くらい)の女の子がひょっこり顔を出した。

「こ、こんにちわ。マ、マーブルっていいます…。」

マーブルと名乗る女の子は恥ずかしそうに挨拶した。
メイはきょとんとして答えた。

「どうも、メイって言います。初めまして…それでコムさん、この娘は?」

「マーブルはわいの後輩の娘や。わいの子供やと思ったんか?」

慌ててメイは答えた。

「いえ、そんな事は…。」

コムは気にせず話を進めた。

「でこいつな昨日、レイヴンになったんや。」

「え!レイヴン!?まだこんなに小さい子なのに?」

マーブルはその言葉を聞いたとたんプーっと頬を膨らませ怒りだした。

「そんな事ないです!これでも18です!もう立派な大人です!」

「ご、ごめん。」

メイは慌てて謝った。
その側でコムは笑いながら言った。

「わははは。マーブルは子供扱いされるんが大嫌いらしいんや。」

メイは困った顔で答えた。

「コムさんは意地悪ですね。先に言って下さいよぉ。」

「そりゃ悪かったな。ほんで話は変わるけどな…。」

コムは急に深刻そうな顔をして言った。

「こいつを預かってくれへんか?」

「は?」

メイは呆気にとられた。

「どういう事ですか?」

「あんなぁ、マーブルの親父がミラージュでAC関係の仕事しとったんやけどあるテストで事故が起こって死んでもうたんや。それで身寄りの無いマーブルをわいが預かったんやけど、わいもこんな仕事しとるさかい忙しゅうてな。泊めるだけでええからこいつ預かってくれへんか?」

メイは驚いた。

「ぼ、僕がこの娘と一緒…。」

メイが言いかける前にマーブルが大声で忠告した。

「しっかり名前あるんだから名前で呼んで下さい。」

マーブルは名前で言ってもらえないと嫌なようであった。

「ご、ごめん。」

メイは言葉を濁すように話し続けた。

「えぇっと…僕とマーブルが一緒に寝泊りをするって事ですよね?マーブルはそれで良いの?」

「うん。あ、あたしは大丈夫…。」

「という事や。ほんなら頼むで。まぁお前ならマーブルと一緒のレイヴンやから何とかなるやろ。ほなまたな。まだ仕事が残っとるさかいにな。たのむでぇ〜。」

コムはそう言ってその場を走り去っていった。

「そ、そんないきなり…。」

メイがそういう前にマーブルが言った。

「ね、ねぇ。メ、メイさんの部屋に連れてって。」

「へ?いきなり僕の部屋来るの?」

マーブルはメイの言葉を聞き逃しているようにそのまま話し出した。

「だって…荷物あるしここでじっとしてても仕方ないから…。」

よく見るとスポーツバッグを肩に掲げていた。

「ま、まぁそうだね。」

メイはタジタジしていた。

「じゃ、じゃあ行こうか。」

「う、うん」

戸惑うメイはマーブルを手招きしながら部屋に向かうのであった。


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