第四話 ライバルその二

メイは戸惑いながらマーブルを部屋へと案内した。
マーブルはキョロキョロ見ながらメイの部屋を見渡している。

「何もないのですね。」

メイの部屋はレイヴンズアークが経営しているアパートの住室である。
部屋の中はこれといって何も無くテレビとベットだけであった。

「こんなものだよ。」

メイは答えた。
それに反論するかの様にマーブルは言った。

「男の人の部屋だからもう少し物があってゴチャゴチャしてるのかと思いました。」

「男が全員そういう部屋な訳じゃないと思うけど。」

「そ、そうですか。」

マーブルがそう答えた後、重い空気が部屋中に広がるのが分かった。
それを切り裂くようにメイが言った。

「きょ、今日は用事があるからここにずっとはいないんだ。マーブルはどうする?」

「あ、あたしもあるので荷物を置いたら出ます。」

「そっか。マーブルもレイヴンだったんだね。じゃあ何時位に終わりそう?」

「ちょ、ちょっと分かりません。終わったらアークの休憩室で待ってます。」

「分かったよ。じゃあ一緒に出る?」

メイがそう言うとマーブルはうなずきスポーツバックみたいな物を部屋の角に置いて

「先に外で待ってますね。」

と言った。
メイは疲れた様に煙草を吸って部屋を出るとそれに気が付いたマーブルは嫌そうに言った。

「うっ、煙草吸うんですか?」

マーブルが不機嫌そうに言う。
それに対してメイは答えた。

「駄目かい?結構吸うんだけど。」

「あたし、煙草の匂い駄目なんです。」

マーブルは本当に嫌そうに答えた。

「分かった。マーブルの前では絶対吸わないよ。」

メイは仕方ないっといった感じで答えた。

「すいません。ありがとうございます。」

マーブルは深々と頭を下げて言った。
溜め息混じりに背を丸めるメイとトギマギしているマーブルはメイの部屋を出てレイヴンズアークに足を向けた。





メイはマーブルと別れて早速オペレーター兼ミッションルームに足を向けた。
オーグがミッションルームで寝ていた。あれからメイを待っていたようだった。

「ずっと待っていたのか…。ん?」

メイは机の上にあるメモを見つけた。メモには汚い字でこう書かかれていた。

〈この前はすまん。反省しているから今度からは気をつける。〉

オーグも少なからず反省している様子だった。

「そうか…。」

その時、メイの言葉に気が付いたのかオーグが目を覚ました。

「んー…?んあぁ、メイか。」

眠そうにしながらオーグはメイを確認した。

「おはよう。昨日はあまり寝てないのか?」

「おはよう。いや椅子に座ってたらいつの間にか寝ちまったんだ。もうミッションの時間か?」

「後、二時間位かな。俺はこれからガレージに行くけどオーグはどうする?」

オーグはまだ眠そうにメイの問いに答えた。

「俺はもう一眠りするわ。」

「ミッションには間に合うようにしてよ。」

「あ、あぁ…。当たり前だろ。」

オーグはそう言ってまたガクッと額を机に沈めた。
メイはメモをポケットにいれガレージに向かった。





ガレージに着いた。
メイは【エスペランサ】を見ながら

「今日も頑張ってくれよ。エスペランサ。」

ボソッっと呟いた。
今、コムはいないみたいだ。メイは一人でACテストをする事にした。

「ACテスト開始します。」

機体のCOMからいつもの声が聞こえた。

「うん!悪くないな。」

【エスペランサ】はテスト用の標的を次々と撃破していった。

『ガコッ』

最後の標的を撃破してすぐに【エスペランサ】から違和感のある機械音が聞こえた。

「ん?なんだ?」

メイは音に気付いて操縦席のシートの右側にある動作状態のディスプレイを確認した。

「異常無し?どういう事だ?」

メイは首を振りながら再度確認したが特に異常がないみたいだった。
そこに音声通信でコムから連絡が入った。

「相変わらず頑張っとんな。調子はどうや?」

「俺は大丈夫ですけど【エスペランサ】がちょっとおかしいんですよ。」

「どないしたんや?」

コムが珍しく心配そうに答えた。

「最後の標的を撃破した時に変な音が聞こえたんです。」

「変な音?兎に角、こっち戻って来いや。」

「分かりました。」

メイはそう答えてテストを終えガレージに愛機を格納した。
コムは心配そうに【エスペランサ】を視た。

「うーん、問題はないみたいやけど?」

「おかしいなぁ…確かに変な音が聞こえたんだけどなぁ。」

首を傾げるメイにコムは聞いた。

「音?どんな感じの音や?」

「何かが崩れるような音です。確か『ガコッ』て感じの音でした。」

メイの発言に何か気が付いた様にコムは作業に入った。

「何か分かったんですか?」

「ん?そやな。今日のミッションには間に合う様にするさかい何とかするわ。」

「分かりました。」

メイはそう言うと休憩室に足を向けた。





「ふぅー。」

メイは休憩室で煙草を吸っている。
そこにきょろきょろしながらマーブルがやってきた。

「あ、ここにいたんですか。」

「うん。どうしたの?」

マーブルは煙草の煙を払いのける様にメイの前に立ち答えた。

「あの…御互いレイヴンなんですから色々問題が出ると思うのでルールを決めないですか?」

「ルール?」

「えっと…例えばあまりお互いの事を検索しないとか。」

「なるほどね。僕は構わないよ。っていうかそれは今、決める事なのかな?」

「あ、後でも良いけど…。」

マーブルはもじもじして言った。

「や、やっぱり他の人と一緒に暮らすのですから…早めに考えて決めておかないと…。」

「じゃあミッション終わった後、ここで待ってるっていうのはどう?」

「は、はい。分かりました。では終わったら来て下さいね。」

「うん。じゃあそういう事で決まりね。」

「はい。あ、ありがとうございます」

マーブルはペコリと頭を下げ何処かに消えて行った。
その後、メイは「全く何故女の子と一緒に住む事になってしまったんだ」とぶつぶつ独り言を言いながら煙草を吹かしていた。
約一時間後、メイはオペレーター兼ミッションルームに足を運んだ。オーグがまだ寝ている気がしたからだ。

「zzz…。」

オーグはまだ寝ていた。

「全く…。後50分位でミッション開始なのに。おい!起きろ!」

メイは愚痴りながらオーグを起こした。

「ふはぁぁ。ん?メイか。」

眠そうなオーグにメイは怒った。

「メイか。じゃないよ。もうすぐミッション開始時間だよ!」

「あ、あぁ…すまん。」

オーグはそう言うとゆっくり起き上がりオペレーションルームに行き席に腰を落とした。

「じゃあそろそろ準備するか。」

「俺も行くからしっかりしてよ。」

「あいよ。メイもしっかりな。」

「はいはい。オーグもな。」とメイは思いながらガレージに向かった。





『ガコンッ』

【エスペランサ】がAC専用輸送ヘリ(クランウェル)のハンガーにセットされた。

「これより戦闘予定区域に輸送する。」

輸送ヘリの操縦者から通信が入った。

「了解。」

メイがそう答えると輸送ヘリはゆっくり上空に上がった。
オーグから通信が入る。

「もう一度、今日の依頼内容を確認する。戦闘予定地はミラージュの兵器開発工場だ。」

オーグは続けて話し出した。

「現地に到着したら警備用MT3機、戦闘ヘリ5機いるらしいがもっと警備が厳重かもしれないから注意してくれ。時にミラージュ側に就いているレイヴンがいるかもしれないからな。」

「了解。」

「戦闘予定区域に入る。これよりACを投下する。」

輸送ヘリの操縦者の通信と同時に【エスペランサ】を拘束していたハンガーが外れた。

『ドスンッ』

【エスペランサ】が着地した。

「MTとヘリは?」

メイはレーダーを見た。

「反応無し?ECMの影響か?」

しかしECMによるシステムエラー音は聞こえない。

「何故だ?敵がいない…。」

戸惑っているメイにオーグから通信が入った。

「敵機確認!上空からだ!」

「上空!?」

【エスペランサ】の真上上空から黒い逆関節のACが降下してきた。

「くくく。待っていたよ。レイヴン!」

黒い逆関節ACのレイヴンはそう言いながら【エスペランサ】をロックしていた。


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