第4話:Contact 序章&前編

 既に秋も深まり、夜から明け方にかけて、確かな冷気を感じられるようになった。それでも日中は、まだ暑い太陽の光が差し込んでくる。
 ジグルド・クロイツァーは愛機=シュツルム・ティーゲルの開け放たれたコクピットで、機体の調整を終えたところだ。暇がある内にと、最近の戦闘データとそれ以前のデータを比較して作成した新しい戦闘プログラムに書き換えたのだ。
 もっとも、システム面は機体搭載の簡易AIが診断を行うので、あまり人間が手を出す必要はない。人手がパーツ自体の換装や内装機構の調節に傾注できるのも、簡易AIが普及している理由の一つだ。

(便利になったもんだ・・・・・)

 開け放しのコクピットから、外界の様子が窺える。技術者と話し込んでいるレイヴン、機体調整に持論をぶつけあい激しい口調で言い争う整備士と技術者、ACの銃火器に装填される弾薬を満載したカートを乗り回す者、うっかり余計なところまで溶接してしまい必死に隠蔽工作を行おうとしている者、さらに背後からそれを凄まじい形相で睨みつけているレイヴン等、色々だ――
 とその時、ジグルドの携帯端末から、専用の電子音が奏でられた。

(おっと、依頼だな?)

 上着のポケットから端末を取り出し、液晶画面を覗く。依頼主は――

「珍しい、ミラージュからか・・・・」

 意外な相手からの依頼に、思わず声が出た。
 続けて画面をスクロールさせる。
 ミラージュ社らしい、高圧的とも取れる文句がクドクドと書かれているが、大体の内容は分かった。どうやら明後日に新型の簡易AIを搭載した機体と、実弾を使用した模擬戦による交戦記録を採りたいようだ。しかも弾薬、修理費用は向こう持ちと来ている、なかなかおいしい内容ではないか。
 砂漠での一件よりも前から、ミラージュとは反りが合わない間柄だったが――まぁ、それは俺だけじゃないがな。と、心中で苦笑を浮かべる。
 まだ人々がレイヤードで暮らしていた時代からミラージュはレイヴンの存在を軽視しすぎる嫌いがあった。今でも形勢不利と見るやミラージュは敵味方を訪わず証拠隠滅を謀るなど、半数程のレイヴンからは、快く思われていない。損失を無視して勝利を築く猛将よりも、生命を惜しんで敗北する凡将の方が、傭兵としてはありがたい・・・・・・
 だがそれでも、パーツの性能は市場中一級を誇り、“BrigadeProject(地上開発計画)”では常に他企業のリードしてきた実力は本物である。
 まぁ今回の依頼は、さして危険度は高そうではない。報酬の額も中々良い、そろそろ武装の拡充を、と思っていたところだ。それに、多少は顔を売っておいたほうが良いだろう。

「オーケィ、受けて立つ」

 依頼受諾のメールを返信してしばらくすると、作戦領域の座標と通行パスコードが送り返されてきた。座標を検索してみると、この街から程近いところに在るミラージュ社所有の研究施設と分かった。言うまでもないが、この通行パスはそこに入り込むための物だ。
 さて、どんな奴が相手なんだろうか?・・・・・ニヤリと口元が緩む。
 それは穏やかな表情だが、胸中ではにわかに鋭さを増したジグルド闘志は、まだ見ぬ敵手へと思いを駆り立てた。

―――――――――――――――――――――――――――――――――

 大小様々なモニターが、前方の視界を埋め尽くしている。
 演習場から送られてくるデータを解析するために誂えられた小部屋の中を、白衣に身を包んだ研究者達が微かに響く機材の駆動音を掻き消し、複雑な専門用語からなる会話を交わしている。普通の人間であれば、恐らく3分の1も理解できないだろう。自分ですら、せいぜい半分が良いところなのだ。

「グラーフ(閣下)」

 側頭部の白髪はフサフサだが、頭頂部は綺麗に禿げ上がった高齢の科学者が、年齢の割にしっかりとした口調で呼びかけてきた。

「ああ・・・・何かね、博士?」

 皺深い手に持たれたファイルケースから書類を取り出すと、それを手渡してくる。

「最新の機動データをお持ちしました、評価をお願いします」

「ああ、ご苦労。少し待ってくれたまえ」

「はっ」

 事情が分からない者がこの光景を見れば、きっと首を傾げることだろう。
 薄汚れた白衣の胸ポケットに取り付けられたネームタグには、フランツと言う名前の下に、“研究所所長”と綴られている。即ち、この研究施設の主と言って差し支えない。
 だが椅子に腰掛け、悠然と書類を受け取る黒髪の青年はいったい何者なのか?

「ふむ・・・・・だいぶ煮詰まってきたが、まだまだクリアする課題は多いな・・・・・・ここの項目にある移動目標に対する捕捉精度だが、もう少し反応を素早くできないか?」

「う〜む、これ以上はパーツを変更するしかありませんな・・・・・閣下はこれでもご不満ですかな?」

 穏やかだが、言外に驚きの気配を老博士が問う。青年は書類から黒い瞳を離さずに、さも当然とばかりに応じる。

「これでは視界に納めるだけで精一杯だろうね。そのパーツはすぐに使えるかな?」

「は――・・・・しかし閣下」

 一瞬言葉に詰まった博士だが、意を決してこの青年に疑問を投げかける。

「たかがBランクのレイヴン相手に、ここまでする必要があるのでしょうか?今機体に搭乗しているパイロットも、フリーランス・レイヴンと言えどアリーナではAランクに匹敵するほどの実力者なんですよ?」

「必要だからこそ、私がここに来ているのではないのかな?」

 一言――この言葉を聞くとただでさえ悪い老博士の顔色が、一層悪くなった。

「はっ――し、失礼しました!」

「よろしく頼むよ。大丈夫、本社には私が話を通しておくから」

 そそくさと背を向けた老博士の背に、のんびりと声を投げかけた青年の口元は、緩やかに弧を描いている――だが注意深い者がその笑みを見れば、先程の博士の様に不快感を露にするだろう・・・・・それは悪意に満ちた、禍々しい笑みだった。
 しかし、この部屋の誰もが青年の笑みに気付かない。それよりも、誰もがこの研究に心を傾けていたのだから――


第4話:Contact

 窓から映る風景は、すでに冬が近いことを物語っている。
 AC輸送用トレーラーを運転しているのはアリウス・ロウ。かつて存在した極東の島国で、最南端に位置する島独特の楽曲を聞きつつ、大いにノリノリの状態で運転している。一方、傍らの助手席ではジグルドが、うたたねをしている。
 周囲はまれに丘陵が点在するだけの荒野。そして今走っている曲がりくねった一本の道路だけが、ミラージュが指定した目的地にたどり着ける――というわけだ。
 つい先程、ゲートまで2kmという表示を見かけたので、そろそろ着くはずだ・・・・・

「・・・・・・・おっ!?」

 小高い丘を曲がった所で、目的地が視界に飛び込んできた。一見それは小規模の基地のようだ。
 所々に人の形をした影が動き回っている。サイズからしてMTだろう、そしてそれより小さい影が歩いている――だがそれだけだ。他は管制塔や、俗に言われるカマボコ兵舎や格納庫がポツポツと並んでいるだけのようだ。
 本当にここでAC同士の演習なぞ出来るのだろうか?

「――ふん、なかなか手の込んだことをするじゃないか」

 いつの間にやら目を覚ましたジグルドが鼻を鳴らし、ドコから取り出したものか双眼鏡を手に、ちゃっかりと基地を観察しているではないか。
 突然の言葉に、アリウスがトレーラーの速度を緩めてたずねる。

「・・・・・どういうことだい?」

「これは俺の推測だが、地上から見えてるところは殆ど偽装だな。この規模の基地に、あそこまで警備に人手を費やすのは妙だ」

 そう言われてもアリウスにはピンとこない、増してや双眼鏡のような便利な物など持ち合わせていないのだ。怪訝な面持ちで問いを重ねる。

「じゃあドコで演習するんだい?」

「さぁて、な・・・・・ここから更に別の所に連れ回されるか、少し離れた場所に演習場みたいなところがあるんじゃないか。まぁ行けばわかるだろう」

 相変わらず呑気に述懐するジグルドに苦笑しつつ、アリウスは速度を上げた。

「了解、じゃあボチボチ行こう」

 アクセルを踏み込み、さらにトレーラーを進ませる。
程なくして彼らは基地のメインゲートに到着し、傍らにあるゲートの詰め所で停止した。
 1人は運転席側のドアに歩み寄り、もう一人の衛兵は警戒の色を隠さずに、ウンザリした顔付きで助手席に座っているジグルドを監視している。

「依頼で来たレイヴンと随行のオペレーターです。進入許可は下りているはずですが」

「少々お待ちください・・・・・・・OKです。所定の場所までエスコートしますので、それ以外の場所には決して行かないでください。安全は保障できませんので」

「はい、わかりました」

 素直に相槌を打つアリウス、ジグルドはただボンヤリと窓の外を見つめている。
 ゆっくりとゲートが開き切り、基地内にトレーラーを乗り入れる。手前に停まっていたジープの運転手が手を上げて、着いて来るように合図した。
 エスコートされていてアリウスは思った。やはりジグルドの言うとおりだ・・・・・・普通なら、ランニングでシゴかれる新兵や物陰で談笑する兵士達が、殆ど見られない。と言うより、衛兵以外の兵士を見かけない。
 やはり、他人には知られて欲しくない秘密があるらしい・・・・・・・
 そんな思考を巡らせているアリウスを余所に、エスコートのジープが格納庫に入り込む。

「・・・・・何だ、ここは?」

 ジグルドの口からは、疑問がそのまま形となって出てきた。
――何も無いのだ。
 格納庫の内部を、車両や航空機、MT等の機動兵器群、他にコンテナや燃料タンクが並べられているなら話は分かる。だがここには何も無いではないか・・・・・
 いや、何も無いというのは語弊がある。格納庫内の奥から人間の物とおぼしき足音が、こちらに向かってくる。
 闇に僅かながら目が慣れ、距離が縮まったことも手伝って影の正体が判明した。
 うっすらと闇から表れた白衣――片方は、馬蹄形に禿げ上がっているが、側頭部はフサフサの白髪頭をしている如何にも科学者といった風体の老人だ。もう一人は秘書か助手であろう。まだ若く、ジグルド達と年齢は変わらないように思える女性だ。
 先にジグルドがトレーラーから降り、二人の科学者から2メートル程の距離までゆっくりと近づく。その間にも、ジグルドの銀の瞳は油断無く周囲の闇を見透かし、不可視の結界を張り巡らせる。
 目当ての距離まで近づくと、無言のまま老人の方を見遣った――促されたと感じたのか、老博士が答える。

「君が依頼を受けたレイヴンだな?私は当施設の所長兼、このプロジェクトのチーフであるフランツ・バンクスだ。こっちが助手であり君達の案内役を勤めるメイベル君だ」

   手早く自己紹介を済ませ、傍らの女性を示す――助手はビジネスライクな慎ましい微笑を浮かべて会釈を送ってきた。
 ジグルドは頷き返し、ゆっくりと懐からレイヴンズ・カードを取り出し、相手に提示して応じる。

「俺が貴殿の依頼を受諾したB−1ランクのレイヴン、ジグルド・クロイツァーだ。さっそくだが仕事の話を聞きたい」

「詳しくは施設に着くまでに話そう。ここでは少々差し支えがあるのだよ」

 そう言うと白衣のポケットからテレビの物より一回りほど大きいリモコンを取り出し、操作する。すると俄かに床が振るえだし、天井までの距離が高くなりだしたではないか!?

「――なるほど、こういう仕掛けだったのか」

 ポーカーフェイスを装いつつも、この現象を即座に悟ったジグルドの声には感嘆の響きが混じるのを禁じえなかった。これは天井が高くなっていくのではない、床が沈んでいるのだ!
 格納庫に偽装された巨大な搬入エレベーターを見抜いたジグルドの反応に、フランツは満足げに答える。

「最近は人のやること為すことに、いちいち首を突っ込んでくるたわけが後をたたなくてな。下に着いたら一応、盗聴器が有るか調べさせてもらうが、構わんだろう?」

 老博士の言葉に苦笑を浮かべつつ、ジグルドは肩をすくめる。

「構わないさ――もっとも、聞いているのは俺じゃなく彼だがな・・・・」

 途中からは言葉に出さなかった。確かに盗聴器の類なぞジグルドは持ち合わせていない。ジグルドは――

「何勝手なことを言ってるんだ。裏切ることが得意なのはそっちじゃないか、ジジイめ」

 トレーラーの運転席で、アリウスは毒づく。
 手に携えていた集音マイクを置き、さきほどの会話を録音しておいたディスクを取り出す。盗聴器の有無を調べられることなど、最初から分かっていることだ。だがしかし、みすみす相手の言いなりになるつもりは無い。
 ディスクを備え付けられた端末に挿入し、一端暗号化させてデータを荷台に積んであるシュツルム・ティーゲルに転送する。ここなら記録を奪われることはない。
 ほとんどのACは起動時に、レイヴンズカードに記録されたデータによって搭乗者を認識するが、ティーゲルは違う。この機体はパイロットがジグルドでなければ、戦闘行動を筆頭に閲覧できるデータも制限させるしくみがある――らしい。
 そんな思考に埋没し、俯いていたアリウスにトレーラーのスモークガラス越しに光芒が射しかかった。顔を上げると、そこはパイプやケーブルに埋め尽くされた壁面ではなく、慌ただしく人々や資材が行きかいする、格納庫となっていた。
 ガラス越しに見えるジグルドが、手招きをしている。その背後には武装した衛兵が鋭い目つきで佇んでいる。どうやらボディチェックを受けなければならない様だ。
 端末からディスクを取り出し、楽曲が記録されたディスクへ適当に紛れ込ませる。端末の電源を切りトレーラーから降りると、足早に駆け寄る――兵士から若干距離を開けて。

「ここの決まりで、オペレーターもボディチェックを受けなきゃならない」

両手を頭の高さに上げさせられ、ジグルドがウンザリした口調を隠さずにボヤく。

「しょうがないさ」

そう言ってアリウスもジグルドに習う、計画通りに。

 電磁波測定装置を手にした兵士が、二人を調べる――大丈夫だった。
 続いて何らかの凶器を隠していないかと、直接身体を叩いて調べられる――ジグルドを調べていた兵士の顔が、俄かに強張った。
 即座に仲間の意味する顔付きを察した仲間の兵士がフランツ達を庇うように動き、短機関銃の銃口を突き付け、即座にトリガーを引き絞れる体勢でジグルドの周囲を取り囲む。
 当のジグルドは、気の弱い者なら気死しかねない眼差しに晒されつつも、平然とした顔付きで、ゆっくりと――耐圧服の上に羽織ったレザージャケットの内側に手を滑り込ませ、同様に、ゆっくりと引き戻される・・・・・・苦笑いを浮かべつつ、引き出した物を頭上に掲げる。衛兵達の鋭い眼差しは手に持ったソレへと、一心に注がれる――赤茶色の革で出来たケースに包まれた、銀のフラスコへと。

「先に言っておくべきだったな・・・・・・」

ジグルドがポツリと呟く。

「「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」」

 沈黙が支配していたが、老博士の合図を受けた一人の衛兵がフラスコを受け取り、振って中身の有無を調べ、続けてキャップを捻り開けて匂いを嗅ぐ――
 一瞬顔をしかめた衛兵だが、次の瞬間には心地良さげな顔付きで頷いた。

「・・・・・・・ただの酒です」

「頼む、没収しないでくれ。それが無いとヤル気が出ないんだ」

 懇願するジグルドに、衛兵はどうします?と言いたげな顔付きで、老博士を見遣る。
 当のフランツは苦虫を噛み潰したような顔付きだったが、頷き返した。

「ありがとう、助かる」

 晴れやかな顔付きでフラスコを取り返すジグルド。緊迫した空気が払拭されたので、遠巻きにこちらを見遣っていた周囲の人々も、すでに活動を再開している。
 不承々々ながらも、説明を再開するフランツ。

「――ともかく、これから機体をハンガーに預けていただく。こちらも準備に2時間程かかるので、それまで時間を潰しておいてくれ。機体の調整をするも良し、この施設を見学するも良しだ。メイベル君を残しておくので、見学したくなったら彼女に頼みたまえ。では後ほど」

 フランツはそう言い放つと背を向けて、行き交う人々の群れに紛れ込んだ。
 後を引き継いで、今度はメイベル助手がジグルド達に語りかける。

「では格納庫に誘導しますので、ついてきてください」

 先程のやりとりなぞまったく意に介していないのか、相変わらず無機質的と言える微笑を浮かべたまま、そそくさとトレーラーに乗り込む。

「・・・・・できるな」

 その後ろ姿を見遣りつつ、思わずジグルドが呟く。それを聞いてアリウスは片方の眉を吊り上げる。

「どっちもどっちだよ」

そう言ってアリウスもトレーラーへと足を向けた。

 その背を見つめ、人知れず複雑な面持ちでやれやれとばかりに首を振るジグルドであった・・・・

―――――――――――――――――――――――――――――――

 荷台から機体を巡航モードで起動させると、ゆっくりと格納庫内を指定されたハンガーへ向けて歩ませるジグルド。シュツルム・ティーゲルの左手には、メイベルが腰掛け指示を送っている。

<突き当りを左に行ってください、そこが12番ハンガーです>

「了解ー」

 無線機から響く声に返事をして、慎重に機体を歩ませるジグルド。既に幾度と無く繰り返して来た行為だ。慣れた操作で通路を歩ませていたが、不意に右側方のメインモニターに、どことなく見慣れたACが映し出された。

「うん?こいつは――」

 カスタマイズが施されたSKYEYEに、左腕には月光とおぼしき、独特の形状をした特大のレーザーブレード形成装置が装備されている。
 機体を固定するところだったACのパイロットもこちらに気付いたのか、主光学センサーを2回点滅させる。間違いない、アイツだ。
 左右の銃火器は脚部ハードポイントに固定しているので、フリーになっている右手を挙げて応じる。そのまま前を通り過ぎ、12番ハンガーに辿りつくと、メイベルを昇降用リフトに乗せ、機能を停止してコクピットから出る。ジグルドもリフトに乗り込むと、メイベルが興味深げに聞いてくる。

「彼とは・・・・・知り合いだったんですね」

 この問いかけに、別に驚くほどの物じゃない。といった顔付きで答える。

「ただの知り合いさ。戦場によっては敵にも味方にもなる、そういった関係だな」

「あら、そんなにドライな関係なんですか?」

 メイベル本人はもう少し、中身のある答えを期待していたのだろう。僅かに意外げな表情を覗かせた――それを視界の端で見遣りつつ、ジグルドは僅かに苦いものを含んだ口調で答える。

「そういう物だよ」

 そうこうしている間にリフトは下に着き、二人を降ろした。
 降り立つと、トレーラーを停めて来たアリウスと共に、ジグルドにとって見知った顔がノホホンとした顔付きで待ち受けているではないか。

「どうしてお前がここに居る?」

 開口一番に、疑問を投げかけるジグルド。
 疑問を投げかけられたレイヴン――ウインド・シグレは相変わらずノホホンとした顔付きで応じた。


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