第三話「戦場―絶対包囲―」

状況は最悪だった。まだ少し距離があるのでこのまま逃げるという手もあるが、軽量2脚 のハヤブサに簡単に追いつかれるだろう。かといって戦っても勝算は薄いだろう。 次の手を考えていたザックがやけ気味にため息をつく。

「ふぅ、ここまできたらやるしかない・・・・か」

バンプとレジーナは、わざとなのかゆっくり近づいてくる。 AI機は、エリアから離脱するようだ。状況を確認した後に、吹っ切るように一声。

「よしっ!」

そしておもむろにOBを展開させ、射程に入る少し前でこちらから打って出る。 ―蛇行しながら接近―その間マシンガンでけん制する。

「お〜、むこうからきたよ〜やるきになったみたいだね〜」

戦えることに歓喜するバンプの声、これを聞いたレジーナはバンプとの回線を切っていた。 レジーナはこの、バンプのふざけた態度が嫌いだった。 なにより、こんなやつが自分より上と噂されているのが、最大の屈辱だった。

「・・・・・・」

無言でザックの弾を回避する。 そしてハヤブサがタナトスに向かって、突っ込んでいった後姿にグレネードを撃ちこみたいという気持ちを抑え、ザックをサイトに捉えるべく動く。 ちょうどバンプとザックが激突する。

「いっくぞ〜」

バンプが小ジャンプを繰り返しながら、距離を詰める。 その間ザックは、マシンガンを撃ちっぱなしだが、すさまじいまでのフットワークで半分くらい回避される。

「う・・・なんて動きしやがる・・・評判は本物か・・・」

そしてブレードの間合い 一閃・・・が一瞬速く横に飛ぶタナトス。

「やば〜かわされた〜」

ザックは行き過ぎた形になったハヤブサに、ターンブーストで向きを合わせ、ロケットを3発撃ち込む。 ―全弾命中―反動で動けないでいるハヤブサに、追撃をかけようとしたとき、またロックオンの文字。

「またかっ!!」

即座に追撃をあきらめ回避する・・・グレネードが後ろで爆音を上げる、さらに多少の時間差で、目の前に投擲銃の弾が爆発する。

「くっ・・・やっぱランカー2機はきついか・・・」

もう満身創痍だった。残弾もマシンガンが300発ちょっとと、ロケットが20発しかなかった。

「でも・・・俺が生きて帰るには、バンプだけは・・・」

そしてようやく体勢を整えたバンプ。

「やるじゃんか・・・でも・・・」

フィンガーで牽制しながら距離を詰めてくる。 こちらからも迎え撃とうと前進しかけたとき、タナトスとハヤブサの間にグレネードが着弾、爆煙で視界がゼロになる。 すかさずレーダーに注目するザックだったが・・・

「反応がひとつだと!!?」

ハヤブサの反応が消えていた。

「そうかステルス・・・くそっ、どこだ!!」

「レジーナ・・・ふん、まぁいいさ、今はおとなしく命令きいとこ」

バンプは援護なんて本意じゃなかったし、ザックはここで殺るつもりだったが、先の一撃でしらけてしまった。 だがここでも屈辱を味あわせるのは忘れない。ザックに通信を入れる。小ばかにしたようなふざけた声。

「ざんね〜んこっちだ〜」

バンプは爆煙があるうちに迂回し、ちょうどタナトスが逆を向いた形になり、後ろから低い位置に月光の一閃を浴びせる。今度は避け切れなかった。 両足にブレードがめり込み、爆発する。・・・さいわい足に当たったため、直接命に別状はなかったがおそらく助からないだろう。

「ダメか・・・年貢の納め時ってか・・・ふぅもう疲れたな・・・」

死を覚悟し、脱力してシートに深々と座りなおす。


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