EPISODE1「名をセラフというもの」


あたりは闇に包まれ街の明かりは消えている。

全てが静寂に包まれている。

動くものは何もなくただ、闇が全てを覆い尽くしている。

ふとその中に異音が混じる。

コンクリートの地面と金属が削りあうような音。

それとほぼ同時に一筋の赤い光闇の中に浮かび上がる。

夜の街にその光が速いスピードで移動する。

その赤い光とその後ろに灯されたブースターからの光まわりを少し照らし、
それがACであることがわかる。

闇に溶け込んだような黒一色のカラーリングだ。

不意にその機体がライトに照らされる。

いつのまにか周りにはヘリが囲んでいる。

「レイヴン、ただちに止まれ。
今ならまだ間に合う。その、奪ったものをかえすのだ。」

あるヘリから声が聞こえた。

ACはブーストを後ろ向きにふかしてコンクリートの地面との摩擦による大きな音とともに止まった。

「お前達が何をしようとしているかわかっているのか?」

ACの外部スピーカーから低く小さな声が漏れると同時に銃身の長いライフル・・・
スナイパーライフルを持った右腕を一機のヘリに向けた。
そして照準が定まったのと同時にあたりに射撃音が響き渡る。
高速で発射された銃弾はヘリに命中し、そのまま貫通した。
そのヘリは一瞬だけ止まったように沈黙し、
その後動き忘れた秒針がうごきだしたかのように轟音とともに爆発。
吹き飛んだ破片が雨のように下のコンクリートにたたきつけられた。
スナイパーライフルが続けて火を吹く。


「確かにこれを完成させれば貴様らが他の企業を倒し、世界は統一されるだろう。
お前らの企業という名のもとでな。
だが、それがなにを意味するものかわかるか?
貴様らは良いかもしれん。
だが、私は・・・一般の市民にとっては・・・」

ACのブーストの噴出口から炎が吹き出る。
そして、スナイパーライフルからテンポ良くヘリを打ち抜いていく。
一瞬遅くれてヘリの銃身から銃弾がいっせいに放たれた。
だが高速で道路を滑走するACにはあたらなかった。
ただACの通り過ぎた道を甲高い音とともに地面を削るのみ。
ACは進行方向をかえ、ビルとビルの間の道にそれる。
その後をヘリから放たれた無数のグレネードがACのいた場所を通り過ぎていった。
そして、先の建物や道路にあたり轟音とともに暗闇を明るく照らした。


「数が多すぎてきりがないな・・・」

レイヴンはため息混じりにつぶやきながらトリガーを引く。
それと同時に横の隙間に隠れる。
さっきまでいた通路をマシンガンやロケットが通り過ぎていき重奏を奏でる。

「このままだと消耗戦で負けるな・・・どうするか・・・」

レイヴンはレーダーに目を落とす。
そこには敵をしるす赤い点が無数に表示されていた。
レイヴンが二度目のため息をついた。
それと同時にコア中に警告音が鳴り響く。
レイヴンはレーダーを見ようとしたがその前にあたりの異変が目に飛び込んできた。
空を飛ぶ無数のミサイル群。
そして、重なり合う爆音。
暗闇を明るく照らす爆炎。
まるで地獄絵をみているようであった。
少しするとそのミサイル音が消えるとともにレーダーに識別不明の機体が高速で飛び交う。

「俺を狙ってこないということは敵ではないみたいだな・・・」

そして、赤い点と重なるごとに敵の数はどんどん減っていった。


「・・・最後の一匹はあの後ろからこっちにくるな・・・」

レイヴンは最後の標的にロックをしてでてくるのを待った。

「や・・・やつは化け物か・・・」

建物の影から現れたヘリの操縦者らしき者の声がノイズに混じって通信機から聞こえた。
それと同時にヘリの目の前に一機の未確認の機体が現れる。
そして片手を上に掲げた。
その先からは青白く輝くサーベルが刃の形を形成している。
そして、両断。
ヘリは斜めに切断され、二つの瓦礫と化して地面に落ちた。
その見たこともない機体は月の明かりで漆黒に輝いていた。
そして宙に浮いており、
背中には灰色の翼のようなものがついていて、そこからでるブーストの光は
まるでガラス玉をちりばめたようだった。
その機体はレイヴンに気づいたように黄色いカメラアイをこちらに少しの間見つめた後、
全身をこちらに向けた。

「おまえは何物だ?」

レイヴンが警戒した低い声で言った。

「秩序を乱すものを排除するのが私の任務。
もし、貴様も秩序を乱す存在となれば、私は貴様の前に立ちはばかるであろう。
私の名はセラフ、秩序を守るものなり。」


そして、そのセラフという機体は大型の飛行機のような形に変形して、大空を駆けていった。


これが私と彼がはじめてあった最初のことであった。

そのときの私にこれから何が起こるなど知る術などあるはずがなかった・・・


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