「ネットワークからの不法侵入者です!第1から第33防護壁まで起動、迎撃を開始します」 「またか!?敵の・・・”バグ”の数は!?」 「単体のプログラムとして確認されている個体だけでも、レベル1が四百三十、レベル2が三十四、レベル8が二体!」 「レベル8の二体にだけ焦点を絞れ!残りは放って置いて構わん!!」 「・・・ダメです!!もう間に合いませんッ」 ピピピ、ピピピ 「レベル8のバグ二体がマッスルトレーサー開発ラインに到達!!続いてレベル2、レベル1も到達!!ファクトリー内に存在する機体の80パーセントがジャックされました!!」 「ええい!ファクトリーの入り口を全て封鎖しろ!!ヤツ等を一歩たりとも外に出すな!!」 「了解。・・・・・専務」 「・・・何だ?」 「以前の件といい、今回といい・・・私達の敵とは、一体”誰”なのでしょうか・・・」 「・・・・・」 「それに・・・あのバグウィルス群は、現状のどのAI機構でも再現不能な複雑な行動を取っています。そう、まるで人間のような・・・」 「バグの中身がなんであれ、私達の敵であることには変わりは無い。・・・規格外品などを造ったことが、こんな形で仇になるとは」 「専務!」 「どうした!」 「ジャックされた”クロムレック”が起動開始します!!」 「レイヴンを呼べ!!こうなったら全て破壊するしかあるまい!!」 ▼【アウトフォース・ピープル】−1 依頼名:MT工場鎮圧 依頼者:クレスト 報酬:530000c 作戦区域:ウォーリンゲス渓谷 敵勢力:陸戦型MT×50、浮遊型MT×20、対AC大型MT×2 レイヴン、緊急事態です。我々が管轄する兵器工場に重大なトラブルが発生しました。通常では考えられない事とは思いますが、外部からのハッキングにより工場内のMTが乗っ取られてしまったのです。幸い、工場は渓谷の断崖に建造されているため、入り口は崖の上と下にしかありませんが、突破されるのも時間の問題です。また、工場内部も非常に入り組んだ構造になっており、ACの推力でなければ届かないような場所も存在します。 我々としては、これ以上生産ラインを停止させたくはありませんが、やむを得ません。工場内に存在するMTを全て破壊してください。 今回のミッションは非常に敵機の数が多く、弾薬が尽きてしまう恐れがありますので、こちらから補給車、そして僚機も同行させます。 「任務了解だ。直ちにそちらへ急行しよう」 即答で依頼を受諾し、ハンガーへ向かうレイヴン。結構な年齢に到達しているのか、眉間にはシワが寄りオールバックの頭髪には白髪も混じっている。 「お!・・・お出掛けかい、オルトの旦那」 男を旦那と呼びかけたのは、若い青年。もう「悩みなんてありません」と言わんばかりに、こちらは明るい笑顔が特徴的で、男とは対照的な印象を受ける。 「依頼だ。・・・私を頼ってきたという事は、おそらく例の件が絡んでいるのだろう」 「あー、あー、アレね。でも、アレってこの間片付いたんじゃなかった?」 「さぁな。・・・だが、私はあれで片付いたとは思っていない。むしろ前回の事件はデモンストレーション程度の印象しか受けなかった。・・・いや、考えすぎか」 「考え過ぎっすよぉ。だからそんなに老けてるんだよ、旦那は」 「いずれお前もこうなる。覚悟しておけ」 「いやいやいやいや、人生前向きに生きてるんでそんな心配いらないのさ」 「足元も注意するんだな。前ばかり見ていると、その内つまずくぞ」 ずりゃ ガタタン!! 「む!!」 言ったそばから男は何かを踏んで転倒した。 「・・・なんだこれは」 ぺちゃ 男が踏みつけ、滑った拍子に”それ”は彼の顔面に覆い被さった。 「あ、それさっきオレが食ったバナナの皮・・・って、あんな事言ってた本人が何してるんだか」 「・・・戦場では不測の事態が付き物だ」 そう言って男はすっくと立ち上がり、何事も無かったかのようにハンガーの奥へと進んでいった。 「いや、旦那・・・バナナの皮、乗っかったままだってば」 男は自分のACへ搭乗し、すぐさまクライアントに通信を入れる。 「これから急行する間に、そちらの状況を説明願う。」 「はい、了解しま・・・ぶふッ」 モニターから男の顔を見たクライアントのオペレーターは、0.5秒と耐え切れずに吹き出した。 「なんの真似ですかッそれは!!」 「気にするな。・・・わざとだ」 オペレーターはふと思う。 ・・・こんなアホウに任せて、本当にいいのか、と。 「コホン、・・・現在、工場に隣接している区域から同社のMT部隊を派遣させて任務にあたらせていますが、正直数が比較になりません。加えて我が社が開発していた大型MTの戦闘力は、部隊など全く相手にならない火力を有しています。とても思わしい状況とは言えませんね」 「そんなものを私だけで相手にしろと?ACだろうと一機ではたかが知れている。それに私はそれ程強いとは言えないが・・・」 「今回の作戦にはこちらからも僚機のACを二機送ります。それに・・・前回の作戦でまともに戦い抜いたのは、レイヴン・・・あなただけです。」 「・・・・・」 「そう。あの特異とも言える暴走したMT部隊とまともに渡り合えたのはオルトランドさんのみ」 「・・・運がよかっただけだろう」 「果たして本当にそうでしょうか?」 「・・・私を疑っているのか?ならば今すぐにでも依頼を破棄させてもらうが」 「・・・失礼しました。只今の暴言は忘れてください」 「ま疑うのは無理はないかもしれん。しかし、私はいつも通りに戦っただけだ。」 「・・・・・」 「まぁ、強いて言うなら・・・AIを相手にしている気がしなかった。戦った相手のほとんどが、まるで素人の兵隊のような感じはしたな。私にとっては機械を相手にするよりそちらの方が楽だ。だから同じような戦い方が通用したのだろう」 「やはり・・・あなたもそう思いますか」 「・・・?」 「いえ、こちらの話です」 「そうか。・・・もうじきそちらへ到着する。工場内へ侵入するゲートの位置を教えてくれ」 「了解しました」 ・・・ 「レイヴン」 「何だ?」 「お願いですから先にバナナの皮取ってください」 −続く− ・・・のか、コレ? |
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