ピ…ピピ…ピピピ… だんだん高くなっていく計器の音…… 頭部の主光学カメラに光が灯り、重い金属音が鳴り響く…。 ACが唸り声を上げる… 『作戦内容は敵勢力の排除、及び目標施設の防衛です。目標施設は最初の投下地点から、かなりの距離がありますのでGPSレーダーなどをで確認すると良いでしょう。なお、この模擬ミッション試験には目標施設も防衛も試験合格条件に入ってますので敵に目標施設を破壊されないように注意を』 カチカチ ACの各モニターや計器のスイッチをONにする。色々な計器がモニターに表示さていく…… ―――――――――――――【繋がり〜The link〜】Vol.4――――――――――――― 『敵戦力はどのくらいなんだ?』 『言えません』 『はぁ?AC試験ってそんなハイレベルなミッションを出すのか?』 黒月は先ほどのデュランとGC試験官とのやり取りを頭の中で反芻していた。 『場所はある地下都市、ミッションが終わり次第この場所は忘れてください』 GC試験官は最後にそう言った。 そうといって忘れられる物ではないと黒月は思う。 それから二人は試験会場のガレージに向かい、機体に乗り換えて、輸送機に乗ったのだ。 今は二人とも輸送機の中にいる。 だが、デュランは通信をしてこない。 ピピピピピピピ… 計器の音はだんだん高くなってくる、それに同調して黒月も気分が高揚していく… 『レイヴン、目標地点に到達した。ACを投下する』 「了解」 「了解」 ブースタースロットルを全開にする、最大出力のブーストで2機のACは天空に飛びたった。 辺りは漆黒、その中でACの白い色と、ブースターの黄色い光が唯一漆黒の闇に彩色を与えていた。 落下していく機体……… CPU:システム起動… CPUの機械的な音が聞こえる。システムが戦闘モードに入った。 FCS(Fire Control Sistem)が起動しモニターにロックオンサイトと射撃ポイントが演算され、表示される。 モニターから見える地上は暗く、景色はまるで星の如く、眩い光が灯っている。 黒月は不意に自分が宇宙(そら)の中に落ちていっているような感覚を覚えた… 高度は500、あと少しで地表だ。 だいぶ地表に接近したので辺りの詳しい景観が確認できる。 地表はビルの残骸と思しき産物で一杯だった。それでも電気系統は生きているらしく、視界はそれほど悪くない。 ブースターをふかし、地表に軟着陸をする。黒月はビルの上に、デュランは地面に。 その時、高い電子音を立て、通信システムが起動した。 「君達、聞こえるかい?」 「ああ、」 セレスからの回線から通信が入る。 レーダーやモニターでは確認できないが、彼は一足早く自分の機体でこのエリアに到着していたようだ。 二人の戦闘内容を直に確認するつもりらしい。 「今から二人に一人ずつオペレーターを付ける、彼らはACの制御やレーダーの情報などのサポートをしてくれるから色々頼んでみるといい」 (ああ、例のオペレーターのテストも兼ねているってやつか) すっかり黒月はそのことを忘れていた。 「だとさ」 デュランから通信が入る。 黒月はオペレーター専用の回線を開き、通信を試みる。 「早速だが、オペレーター、マップを表示してくれ」 「アイアイサ〜」 ふざけているような声が通信機から聞こえてくる。 ………どっかで聞いた声だが………きっと幻聴だろう……… 周辺のマップの見取り図がモニターの右半分に表示される。 今度はオペレーター側から通信が入ってきた。 「どうやら目標は北北西、14000の地点のようだね」 「………」 「ん?どうしたのパイロット君?」 「…いや、俺の知り合いに良く似た声だな、と思って…」 「ああ、多分人違いでしょう」 ……… 「なあ、クレス、今日の晩飯はなんだ?」 「ああ、リゾットと、コンソメスープとキュウリとレタスがメインのサラダさw」 刹那 「何でお前がここにいる!!!!!!!!!!」 ――――――――――――――――――――――――――――― 「なんだ?黒月のやつ、騒ぎやがって。もう作戦行動中だぞ?」 デュランは苦笑しながらオペレーターに指示を出す。 「オペレーター、この機体のOBの制御システムを切ってくれるか?どうせ制限されてるんだろ?」 ややあって若い利発そうな女性の声がした。 「可能ですが…OBの使用はもう少し操作に慣れてからのほうが…」 「なに、構わないさ。ここで試験を落としたらどの道体験することもねぇだろう。一度やってみたかったんだよ」 「…了解しました」 ――――――――――――――――――――――――――――― どうやら、黒月はGCの回線も開いたままにしていたらしく、セレス機やGCにも騒ぎの情報が行き届いていた。 「なんだ?騒がしいな」 セレスはそう呟くとGCの管制センターへの回線を開いた。 「どうなってるんだ?」 「いや、ちょっと…パイロット試験者とオペレーターテスト生が顔見知りだったようらしいです」 「なるほどな」 セレスは少し考え、こう呟いた。 「彼もまた…知らず知らず誰かに守られてるわけだな…」 なにかその言い方は自分の過去を照らし合わせたような、懐かしみを込めたいい方だった… コクピットのモニターの中で、男の不気味とも言える笑みが反射している。 ―――――――――――――――――――――――――――― 「まあまあ、堅いことは無しに。(チッ、まさかこの僕が日常会話にはめられるとは…」 「お前な…ずっと隠れてこそこそ何かしてたと思ったらオペレーターの勉強だったのかよ」 回線越しにクレスのクスクスと笑う声が聞こえてくる。 「まあ、君ほど努力したって訳じゃないけどね」 そう言った時にデュランから通信が入った。 「わりぃな、先に行かせてもらうぞ」 「あ、俺もすぐに行く」 慌てて、そう答えるが、それに対しての返事は無い。 どうやら無駄話が過ぎたようだ。試験に響かなければいいが。 モニターからデュラン機のコアのハッチが開く様子が確認できる。 OBを使うつもりだ。 辺りの大気を吸収し、歪ませACは音速をこ超えて移動し始めた。 一秒も経たない内にレーダーから緑色の反応が消えた。 「OBか…あの人なかなかやるね。こっちもOBだw」 それを聞いた途端、黒月の顔が青くなった。 「ちょ、ちょい待ち!OBは普通人が使ったら内臓破裂とか色々危険な…」 「あ、もう押しちゃった…」 …こいつ、今までどうやってオペレーター試験を合格できたんだ? そう思う黒月だったがいまさらもう遅い、Gに対応する為に姿勢を丸め、レバーを堅く握り締める。 ハッチの開く音が聞こえ、続いて空気を吸い込む音が聞こえた。 「大丈夫wあの人もOBできてたじゃんw」 「あの人はMT乗りなんだよ」 「え”…」 殺人的加速が黒月の体にかかる。何Gあるんだろうか? そのGに黒月はなんとか絶えられたようだ。 白い機体がOBの黄色い残滓とともに天空へと舞い上がった。 |
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