GCの試験官達はこのミッションは模擬ミッションだと言っていた、しかし、この状況から判断するにこれは正式のミッション何ら変わらぬ状況だった。 ―――――――――――――【繋がり〜The link〜】Vol.6―――――――――――― 「おいGC!どうなってる!?」 デュランがGCに通信を送る、しかし受信機からはザーっとしたノイズしか聞こえてこない。 「まさか…ジャミング!?」 デュランの驚愕した声が聞こえる。普通、レイヴン試験でここまでするのだろうか? 「おいクレス!聞こえているか?」 黒月もクレスと通信を試みる。 「ああ、どうやら厄介な事態みたいだね…」 どうやらこの回線は生きているらしい。デュランも自分に当てられたオペレータと通信を取っている。 「…お前の方でこの状況の原因を探れるか?」 少しの沈黙… 「1分持ってくれ、そのあいだに調べて見せる」 「分かった」 デュランに通信を送る 「この状況はどうする?」 「もうこっちは少なくとも2機撃っちまったんだ、いまさら停戦は出来ないだろうよ。敵機回線を開いてみな」 そう言われて黒月は全回線をONにしたままなのに気づく、しかし先ほどと同じくノイズしか聞こえない。再びデュランからの通信が入る。 「そういうことだ、これで通信――――交渉は不可能、相手は撃ってくるぞ!」 どうやら味方機とオペレーター以外の通信システムは全てアウトらしい。味方機同士の通信もノイズが混ざっていて、いつ通信不可能になるか分からないといった状況だった。きっと原因はあちらのジャマーにあると思うのだが… 「ともか…ザザ…機を殲…ザザ…する」 次第にノイズの音がひどくなる。 「了解」 聞こえたかどうかは分からないがそう答えておいた。見れば周囲の砂煙も収まり、視界が晴れてきた。 敵MTがこちらの姿を確認し、ミサイルやライフルを乱射してくる。スロットルを全開にし、相手の弾幕を機体をスライドして回避した。 デュラン機は上空へ避け、主武器をミサイルに切り替えている。そこへ4発ほどのミサイルがデュラン機めがけてホーミングしてきた。 「くっ!!」 空中で機体をスライドさせ回避しようとするが、初期ブースターでは動きが鈍い。直撃するかに見えた――――――が、 地表から数発のライフル弾が飛んできてミサイルを一つ打ち落とした。その誘爆作用で残りのミサイルも空中で爆発する。 「な…」 地上で黒月機がこちらに向かってライフルを構えている、ライフルの砲身から煙が出ているのを見るとさっきの弾はどうやら黒月機が撃ったものらしい。黒月機が間一髪の所でミサイルをライフルで迎撃したようだ。 「ヘっ、粋なことをしやがるがー」 その時密かに黒月機に接近していたMTがいたが、デュラン機がミサイルを放ちMTを大破させた。そのままデュラン機は空中でホバリングし、MTに次々とミサイルを放つ。黒月機は敵に接近戦を挑み、初心者とは思えない動きで弾幕を回避し続けながらライフルで数機を大破させ、いったん敵から距離をあけた。デュラン機も着地し、黒月機と背中合わせの状態になる。 レーダーを確認すると敵MTの数は残り6機にまでなっていた。両機が接近した状態になったので通信が一瞬だけ回復する。 「お前とは良い相棒になりそうだな。」 「ぬかせ。」 短い言葉を交わし2機は次々と敵MTにライフルを的確に撃ちこんでいく…。 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 薄暗いスラムのような大量の鉄の残骸の残る中、2機のACが背中合わせで直立不動のまま立っている。その姿はかつてACと言う兵器が初めてレイヤードに姿を現し、その時絶大な戦力を誇っていたMTを次々と屠っていった時と同じ――――――まるで神の化身のような姿で直立していた… 「…どうやら片付いたようだな」 黒月機から通信が入る。 「ああ、施設防衛、敵MTの排除、どちらにせよ試験の目標は達成したはずだ」 「これでやっと俺もレイヴンか〜」 デュランのどこか腑抜けたような通信が入ってくる。しかし黒月機からの返信はない…なにか様子がおかしかったようだ。 「…坊主?どうした?」 デュランは気づいていなかった。それは実戦を経験したMT乗りと何の経験も無しにレイヴン試験を受けた者の決定的な違いだった。 「…俺は……」 今更になって気がついた…さっきまでは戦闘に夢中になって気がつかなかったのだ。 MTの崩れ落ちる姿…コクピットに向けて発射されるライフル弾…ミサイルを受け、原型も留めず破壊されたMT…そしてパイロットの最後の断末魔――――――― 『レイ…ヴン…』 あの時聞こえた声が頭の中で反芻される…自分も違う道を歩んでいたら…この場で殺されていたのは自分かもしれない… 「…俺は……人を…」 コクピットの薄暗い光の中、黒月は一人震えていた…『人を殺した』という『恐怖』と共に…レバーを握った手が痙攣しているように震え、ガチガチとさっきから歯の根が合わない… 「坊主……」 ようやくデュランも自分の過去の経験から黒月の状態を察した。 黒月はレバーから手をようやく離して、震える手を両手で堅く握りこんだ… 毎日必ず人が死ぬスラム…そこで長年住んでいた黒月は人の死ぬ光景などとうに見飽きている…しかし、生きる為に人を殺したことはなかった… 彼は今、自分に課していた最大の禁忌を自ら破棄したのだ。 「心配…無い…」 (そう…心配無い…さ…) その時、黒月機のコクピット内に高い電子音が鳴り響いた。黒月の心臓は飛びあがり、落ち着くのに5秒ほどかけて、その通信回線を開いた。 |
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