Vol.7

「黒月、無事か!?」

クレスの心底心配した声がコクピットに鳴り響く。どうやらオペレーターとの通信システムが回復したようだ
こいつの取り乱した声を聞くのは久しぶりだな…。そう思うと次第に震えが止まっていった

「ああ、無事だ」

何も無かったかのように黒月は通信を続ける

―――――――――――――【繋がり〜The link〜】Vol.7――――――――――――――

「そう…黒月が無事なら良かった…途中で通信途切れるし、本当に心配したんだよ…」

「悪かった、これは不可抗力ってやつだ…そっちで何かわかったのか?」

「あ、そうだ!こんな話をしている場合じゃない、今そっちにミラージュのMT部隊が接近してるんだ!」

「(ミラージュの…)どう言うことだ?ともかく状況を教えてくれ」

「…敵戦力は今の所は判らない…熱源を感知してみる限り中隊…もしくは大部隊と思う…数分前に近隣のミラージュの施設から増援が派遣されたとの情報が入ってる」

「くっ、なんでGCの回線は回復しないんだよ!」

デュランも事態を察知したらしい…前の戦闘では比較的機体のダメージが少なかったが、弾薬が持たない

「もう一人の受験生も聞いているわね」

凛とした声がコクピットに鳴り響く。デュラン機のテストオペレーターのようだ。

「こっちの情報を照らし合わせてみると、どうやら模擬ミッション目的の施設をミラージュが狙っているらしいの」

「と言うことは、さっき戦闘したMT部隊はミラージュの部隊?」

黒月の疑問にクレスが対応する

「こちらも同じ見方をしている。どうやらレイヴン試験管制所とのジャミングはまだ消えてないみたい。…推測すると初めにいた試験用MTは後から施設強襲に来たミラージュのMT部隊に殲滅されたんだと思う」

「…ってことは…この場合の扱いはどうなるんだ?レイヴン試験は?」

デュランがもっともな質問をする。それにクレスが答える

「どうなるかは判らない、現在もミラージュによるジャミングは消えてない。ともかく今は…逃げることが先決だ!」

確かにこの武装でミラージュの大部隊と戦闘するのは危険極まりない。しかし、事態は急展開を迎える

「え、ちょっと待って…熱源を感知しました!8時の方向に大型輸送機です!」

デュラン機のオペレーターから通信が入る

「輸送機だと!?」

黒月機はビル屋上までブーストし、8時方向を見てみると高高度の闇からから赤い点が接近してくるのが確認できる

「戦闘機まで来ている、機数約20機以上!」

赤い点は真っ直ぐに施設向かって接近してくる

「マズイな、こっちの位置はバレてる…この機体では戦闘機は振り切れん!」

「二人と…ザザ…逃げ…」

御丁寧なことにまた通信妨害してくる。これでGC、オペレーターの指示が仰げない

「どうする…このままでは…」

「どうするって…やるしかねえだろう…施設のことは気にするな、生き残れるかどうかも怪しいぞ!」

突然、前方の赤い点から無数の白い煙が接近して来たミサイルだ。思ったより戦闘機のFCSレンジは長いようだ。黒月は機体をいったん地表に戻し、デュラン機と共にビル群から先ほど戦闘してた広場へと移動する

「迎撃しろ!」

黒月は瞬時にスコープを眼前に持ってきてFCSを迎撃モードに変更させる。接近してくる第1派のミサイルをライフルとコアの迎撃装置で打ち落とす。しかし全部は回避、迎撃しきれず4、5発被弾する

「ぐあぁ!」

コクピットに重い衝撃が走る。的を外れたミサイルは周囲のビルに当たり、周辺にガラスが飛び散る。
ビルが崩壊し、舞い上がった爆炎の中から悠々と20機の戦闘機が一直線に並んで現れ、2機のACを通り過ぎていくつもの部隊に分かれた後、大きく左右に回りこむ
2機は機体を反転させ、いくつもの部隊に分かれた戦闘機に対してライフルを放つ、数機の戦闘機が被弾し、ビルへと墜落する
黒月機が戦闘機を追撃しようブースターを吹かした瞬間、モニター右側が発光し、耐えがたい衝撃がコクピット内に伝わる

「何!!」

それは戦闘機による攻撃ではなかった。右脚部がビルから一斉射されたライフルによって破壊されたのだ

「坊主!…くそ、囲まれてやがる!」

戦闘機に気を取られ包囲するように接近してきたランスポーターに気がつかなかった。レーダーにおびただしい赤い点が映る。その数およそ30…ランスポーターがビルから黒月機に攻撃してきたのだ。すかさずデュランがランスポーターの迎撃に向かう
黒月は斜めに傾いた機体をブースターで上空へと移動させる。その際にも戦闘機の無数の弾幕が黒月機を襲うが、それを機体をスライドさせながら何とか回避し、姿勢制御を保とうとする

『CPU:オートバランサー起動…制御完了』

「よし、まだ行ける!」

途端にモニターの視点が元に戻る。そしてFCSをマルチアタックモードに変更し、ミサイルとライフルをリンクさせる。黒月機はホバリングしながら向かってくる戦闘機にライフルとミサイルを同時に次々と撃ちこむ。デュランは接近戦を持ち込み、ビルを盾にしながら急速接近しランスポーターをブレードで一体ずつ屠っていく。流石に実戦慣れしていて乱戦にはうまく対応しているようだ。しかし――

「うああ!」

地表に着地した黒月機のミサイルポットに背後のビルに隠れていたランスポーターのライフルが着弾し、中の火薬が引火した、黒月機の右腕が吹っ飛び、バランサーが崩れ機体がビルに激突し横倒しになる。ビルのガラスが派手に飛び散る
更に旋回して来た戦闘機からのミサイルが撃ちこまれる、苦し紛れにブレードを形成し、コアの前へ構えてミサイルを迎撃するが、迎撃した際の衝撃でブレードは使い物にならなくなった
第二派のミサイル攻撃がもろに被弾しコクピット内の計器がいくつか吹き飛ぶ。破片が飛び散り黒月の頬に赤い線が走る

「やばい…排熱が追いつかん…」

デュランの荒い息遣いが聞こえる…デュランは黒月機をかばう様に敵の攻撃を受けていた。ライフルとミサイルが波状に次々とデュラン機に着弾し、装甲が赤い色になって溶解しだす。ラジエーターの放熱が着弾による熱量に耐えられなくなった

「デュラン!!俺に構わず逃げろ!!」

「ミラージュさんは容赦が無いね〜」

デュランが場違いなような軽い口調で言う…デュラン機の装甲がどんどん削られ、更に熱量によって溶解されていく…黒月は倒れたままの姿勢からライフルを放ち、撤退を援護しようとするが、デュランは撤退する様子を見せず、勝てると見て一斉に接近し、猛攻をしかけてくるMTにライフルを撃ち続ける
―――が、その時デュラン機のライフルの弾が切れた。辺りのビルにMTのライフルやミサイルが着弾し、ビルを炎上させる

「く…弾切れか…」

敵戦力は最初の半分までを破壊されていた。しかし、物量が違いすぎた。ランスポーターと戦闘機の10数発のミサイル群が白い煙を吹き、闇を切り裂きながらデュラン機を襲う。デュランはライフルをパージし、ミサイル迎撃のためにブレードを形成して防御体勢を取るが、あの数のミサイルを着弾すれば大破は確実だった。ミサイルがモニターを覆い尽くす。頭の中に声が響く…

『レイヴン……』

更にもう一波、ミサイル群が飛んでくる。赤い光がモニターを覆い尽くした


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