終章

あれからから二日後……

――レイヴン試験会場――

【E−17フロア】

そのフロアは他のフロアとは作りが違い、天上は高く、ドアから向かって真正面に大きな窓があり、外の風景を満遍なく映し出されていた。夜になると酒を飲みたくなるような良い景色だろう。床には高そうなカーペットが部屋一杯に敷かれており、壁には絵画が、そしてその窓がある手前に高価な木で作られたと思われる大型のデスクがある。
そこに3人のスーツを着込んだ男が高そうな椅子に座っており、座っている男達の視線の先に二人の直立している男がいた。
一人はまだ二十歳にもなっていないようで、落ちつきのある黒い髪と黒い双眸が特徴的な顔立ちの良い痩せぎすな少年だった。
もう一人は褐色の肌に短い銀髪、そして青い瞳をした20代前半のような男で背が高く体格はかなり良い、二人とも銀色のパイロットスーツを着こんで腕にはヘルメットを抱えている。

「――――――以上がレイヴンに対するGCの対応です。後はこのマニュアルを」

初老の男がそう言い顔を上げ、隣の男に目配せすると、隣にいた男が立ち上がって二人に書類を手渡した。

「こちらからも貴方たちの自宅のパソコン末端にバックアップ用のデータを送りますので確認をして下さいね」

男は書類を手渡しながらそう言った。そして二人にGCのレイヴン身分証明書を手渡す。初老の男が一呼吸した後で二人に告げた。

「ゴホン、それでは…今この瞬間から君たちはレイヴンです。これからの御活躍に期待します」

二人の男が出ていく、そのあと、右端に座っていた男が初老の男に話し掛けた。

「しかし、二人ともあの放火の中を良く生き残れましたね。コクピットから回収したデータから推測するに、受験生10の方は既にCランカー級の腕前を持ってますよ」

初老の男が答える。

「レイヴンならあの程度出来ないと生き残れないでしょう。まあ、確かに実力は認めますがね。セレスティアルスターが救援に入ったものの、戦力の半数は迎撃されていたと聞いてますから」

もう一人の男が答える。

「…局長、知らないんですか?」

「何のことでしょうか?」

「黒月・レインベル…後になって気がつきましたが、どうやらあのレイヴンの弟らしいですよ」

そう言われて初老の男はハッとした表情になったが、すぐにもと通りの表情に変わった。

「そうですか、あのアリア・レインベルの……」

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

風が舞う…空は青く所々に真っ白な雲が浮いていた。風は公園の道を駆け抜け、公園の道を歩いていた少年の黒い髪をやさしく撫で、そのまま吹き抜けていき桜の木を揺らす…
桜舞い春の陽光の降り注ぐ中、ラフな服を着た少年は気持ちのいい風を受けとめながら人気の無い公園を一人歩く。
しばらく歩いていると少年の歩いている方向から栗色の髪の少年がやってくるのが見えた。黒色の少年は足を止めて栗色の少年が来るのを待つ、しばらくして二人は対面した。そこに桜舞う静かな春の静寂が訪れた。
栗色の髪の少年はベレット帽を被って、黒色の制服を着ていた、胸の勲章のような部分には小さくGCと書かれていた。二人は一分ほど黙ってお互いを見ていたが、やがて黒い髪の少年が微笑しながら口を開いた。

「まったく、似合ってないな」

ベレット帽が似合ってないのか、それとも制服が似合ってないのか、黒い髪の少年がそう言うと、栗色の髪の少年も微笑しながら口を開く。

「君こそ、そのナリでレイヴンだなんて似合ってないさ」

そう言いあって、二人はクスクスと笑い出す。

「まあ、これからよろしく頼むな、クレス」

「ああ、よろしく黒月。長い付き合いになりそうだね、じゃあ行こうか」

「そうだな、あいつも待ってることだしな」

二人の少年は方を並べながら公園の道を歩き始めた。
一陣の桜風が少年達の周囲を鮮やかに彩色する…


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