Vol.2

――――――――――――【邂逅〜Time say good-by〜】Vol.2――――――――――
【重装騎士】

「…ザザ…レイヴン、聞こえますか?」

「ああ、聞こえてるぜティナ。レーダーに反応は?」

広い平原に、赤と緑の対色を基調とした一機の中量二足がたたずんでいた。平原には所々に岩があるだけで視界はそんなに悪くない、下手にレーダを頼るより肉眼で索敵した方が効率が良さそうだ。

「反応は今の所ありません。しかし警戒を怠らないで下さい」

「了解、持ち場を維持する…ったく、暇だな」

「レイヴン…」

「へいへい、真面目に監視してますって」

赤いACの後方には中規模の施設があった。
彼――デュランは昨日の夜、クレストからの依頼を受けていた。そして今日の未明からずっとこのエリアを防衛し続けている。もう太陽は真上に輝き出している。依頼の内容はこんな感じだった。

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発信者:グローバルコーテックス
件名:クレストからの依頼です
内容:レイヴン、緊急の依頼だ。我がクレストの開発施設がミラージュによる襲撃を受けた。幸いにも施設に配属していたMTが奮戦し、第一派は撃退することに成功したが続いての襲撃があれば確実に落ちるだろう。こちらの補給が終わるまでの施設防衛に当って欲しい。
なお、この施設は極秘扱いの為、施設に侵入された場合基地を爆破する。そのことも念頭において置くように。

開始時刻:26時00分
敵戦力:不明
場所:オルタ平原東部AC開発施設
ミッションランク:C

前払報酬:10000C
成功報酬:30000C

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デュランは依頼を受諾した後、彼の専属オペレータのティナに連絡し、深夜に輸送機に乗ってこのエリアに到着したのである。

「もうこんな時間だから奇襲は無いんじゃないのか?」

デュランはコクピットの中、一人愚痴りながら携帯食を食べている。

「レイヴン、敵反応上空に戦闘機7、MT8です!!」

「なッ、いきなりかい!!」

慌てて携帯食を口の中に詰め込み、システムを戦闘モードへと移行する。
移行が終了し、ACの四肢がフルモードで起動しバズーカを持った右腕が前方に伸びる。
レーダーに青い点が表示される。敵戦闘機が空を滑空しながら接近してきた。デュランはバズーカと方に装備している3連ミサイルをパージし、スロットルを全開にし、OBを点火した。

「アフォホヒフォハヒハフンハヘ!!(※あの時とは違うんだぜ」

何言っているのか分からない。
デュラン機はOBとブースターを吹かし、戦闘機へ急速接近する。戦闘機が5,6発のミサイルとマシンガンをデュラン機目掛けて放つが、デュランはスライサーを使い機体を螺旋運動させ弾幕を全てかわし、青白いブレードを形成し敵陣へ突っ込む。そして戦闘機とすれ違いざま高出力のブレードを数回振り4体もの戦闘機を切り刻み、爆破させた。

「流石月光、薄い装甲などは掠っただけでも切れるか」

ようやく携帯食を食べ終えたのか、声が明瞭になる。
デュラン機はいったん地表に着地し、ENの回復を待つ。そこへ残りの戦闘機が接近して、ほとんど真上からミサイルを放つがデュランは機体を平行移動しただけで回避する。外れたミサイルは無意味に地表へと当り、移動した後の一直線上に砂煙を舞い上がらせる。
戦闘機が旋回して距離を置こうとした瞬間、砂煙の中からバズーカ弾と無数のミサイルが飛来してきて戦闘機を一機残らず打ち落とした。

「………レイヴン、腕を上げましたね」

「そりゃあ、月に10回もミッション受ければ誰でもそうなるさ」

砂煙が収まった後、砲口から硝煙を上げているバズーカを構えた赤いAC――――【サンドガーディアン】が姿を現した。

レイヴン試験終了後、デュランはアリーナには一切出場せず、戦場の勘を取り戻そうと3日に1回はミッションをこなしていた。もともとMT乗りだったデュランは戦場での戦闘を熟知しており、それに加えて装甲、火力の高いACに慣れてきたので、ミッション時の戦闘能力はレイヴン試験時より各段に上がっていた。もちろん、ミッションは安全な物ばかりを選んできたわけではない、時にはBランク級のミッションも受諾し、それらを全て成功させてきた。

「クス__さて、2時方向に敵機反応ですよ」

そんな生死の境のミッションを成功し続けたのは何もデュラン一人の力だけではない、優秀なオペレータが彼に配属されていたことも成功の大きな要因だろう。
「了解」

サンドガーディアンは機体を旋回させ、再びOBを起動しMT群へ突っ込んでいく…

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「ピー……ザザ…レイヴン、聞こえるか?」

敵MTを殲滅し終えたデュランにクライアント―――クレスト側からの通信が入る。

「ああ、聞こえてるぜ。どうした?」

「こちらの補給が完了した。これより任務終了とする。よくやってくれたレイヴン」

「了解。依頼金は指定の口座へ―――――」

そう打ち合せしている時だった、サンドガーディアンのコクピット内に甲高い電子音が鳴り響き、ティナからの通信が入ってきた。

「敵反応!!10時方向からACと思われる熱源を感知しました!!」

「何ッ、ACだと!?レイヴン至急迎撃に当ってくれ、追加報酬は出そう!」

やれやれと言った気持ちでデュランは通信を返す。

「了解、これより迎撃に当りま〜す」

気の抜けた返答をし、サンドガーディアンはブースターを吹かし、熱源のある方向へと接近していく、次第にレーダーにも反応が映り赤い点が二つ出現した。

「ティナさん?AC二機って反則じゃない?」

「私に言わないで下さい…」

デュランは言うが、口調はかなり軽い。レーダーが敵機を捕らえ、モニターに敵ACの拡大図が表示され緑色のカラーリングの中量4脚と、黄色のカラーリングの軽量2脚が確認できた。

「Library照合…C−14レイヴン【カタパルト】とD−4レイヴン【スティングレイ】の二名のようです」

3機はお互い中距離を保った所でブースターを停止した。デュラン機に敵機回線から通信が入る。

「サンド…ガーディアン?おいおい、こんな名前も知らない機体が俺達の相手になんのか?」

4脚にショットガン、チェーンガン、ブレードを装備した機体から通信が入る。

「ふん、雑魚はさっさと消えろ」

今度は軽2足にマシンガンの2丁拳銃を装備した機体から通信が入る。

「(あの軽2足…アイツのアセンに似てるな…)お二人さん、ここは同じレイヴン同士仲良く取引といきません?」

デュランは敵の挑発に意を介さず通信を送り返す。

「ほう?その取引とは?」

「お宅らは機体を180°回転させてOBを起動させる。代わりに俺はその間攻撃しない、という取引で」

「ほうほう、機体を回転させてOB…って!!舐めてんのかテメェ!!」

軽2足の機体が反転し、OBを起動するかしないかのところでデュラン機に向き直り、デュラン機にマシンガンを乱射する。デュランはその弾道を読み、機体を後退させ回避する。着弾した地面が一直線に砂埃を上げる。


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