終章&あとがき

錆色に染まってゆく空が視界に入って流れてゆく。
廃墟のような町の建ち並ぶ地区が終わって、ただ岩と砂だけがある荒野が広がる。
サイレントライン地下にある中枢施設への入り口、大きく開いた縦穴のすぐ傍に、青色の機体が夕日に照らされながら、ただ静かに、佇んでいた。

―――――――――『懐かしき日々〜Perfect Blue〜』終章―――――――
【染められた空の赤に僕は君は沈んだ。宛ての無い足跡を残したまま】

「アリ……ア…」

その光景を見て、ただ呆然と、ロアは呟きを漏らした。
すぐさま機体を肩膝をついたまま、動かないアグリアスに寄せる。
機体を停止させると同時に、自分も重症なのにもかかわらず、ロアはコクピットから踊り出て、アグリアスの機体を駆け上る。

「…嘘だろ…アリア……」

自分の心に未だかつて無い不安と恐怖が溢れ出す。それは彼が感じ慣れた、戦場で、命を奪われる類の感情とは別の――――大切な者を失う恐怖の感情だった。
奇しくもそれは、彼にとって初めての感情だった。
コクピットブロックのロックを解除する、亀裂が走り、奇妙に変形したコアの装甲が開き、内部には赤い点―――血痕が飛び散っていた。
コクピットから溢れて来る生暖かい空気に、機器の金属の匂いと共に錆びた鉄の匂いが、混じっていた。
手が、唇が、恐怖で、震えていた。
片足を装甲内部に乗せたまま、もう一方の足を乗せるのに、ひどく時間がかかった。
まだ、横を見てない。
見れなかった。少し視線をずらせば、そこにアリアが、いる。
その時、雲が晴れて、コクピットに夕日の光が差し込み、視界の端で金色の髪が目に入った。そこでロアは我に返った。

「………あ…」

視線の先、アリアがいた。静かに、微笑を浮かべて、少し、俯いたまま―――
コクピットの機器が壊れて、その破片の一部の長い金属が一本、彼女の体を貫いて、死を、与えていた。
思考回路が停止して、ロアはただ、呆然としていた。
一拍遅れて、例えようの無い感情が、ロアを支配して――――
彼女はただ微笑んで、胸の中、血に塗れた両手で何かを大事そうに握りこんでいた。
微かな嗚咽が、自分の口から漏れて、ロアは一歩、コクピットに入って、アリアの両手を手にとって、握りしめて、そこで俯いた。

握り締めた黒く染まった薄い耐熱用グローブに覆われた、アリアの掌の中に、軽い音を立てて、銀色の鎖と、指輪が血に濡れぬよう、大切に、大事そうに守られていた。
青い宝石が、夕日と相俟って紫色に、輝いていた。それが今、血に濡れ始めた―――
――俺も一緒に戦うから絶対お前を一人で行かせないから馬鹿でもいいからお前と一緒に居たいから――
―――俺が、守るから―――
彼女と過ごした日々、その記憶が脳裏に浮かび、走馬灯の如く流れて行く。
―――ありがとう―――
最後のその言葉が、胸に突き刺さって――――

「ッッ!!畜生ォォォォッッ―――――――――――!!」

遠くで、輸送機のような低い重低音が響いていた。
ロアの咆哮は、染められた空の赤に吸い込まれて―――消えた。

―――――――――――――――――――――――――――――――――

――――あれから三回同じ季節が過ぎて、春の終わりのある夜。
長身痩躯の赤髪の青年の前に、一人の少女のような少年が、ハンドガンを構えて彼を睨み据えている。

「姉の…消息を教えてください」

フッとロアは苦笑を漏らした。あまりにも彼女と重なる彼―――
二、三言会話を交わし、彼は少年を通り過ぎ、再び歩き始める。
少しして、彼の頬に空から水滴が振ってきた。

「……雨…か」

雨音は優しく、控えめな旋律で、歌を歌う。
少年から大分離れて、ロアは自分の胸元にある、鎖に括りつけられた銀色の指輪を見る。
それは彼の、彼女の大切な思い出、そして形見だった。
背後を振り返る。闇一色の景色に、銀色の糸が落ちて、跳ねていた。

―――――アリア。お前の弟は、この道を選んだよ―――――

「…黒月・レインベル。君の対決の時、俺は君の剣となり盾となり、君を守ろう。それがアリアとの約束だからな……」

誰にも聞こえない、約束の言葉。
雨はただ静かに、歌う。
それはあまりにも悲しく、儚い旋律。
遠い昔に失った、大切な誰かへの鎮魂歌――――――――




―あとがき―


煙草湯煙庵・パート1
BGM【Bad Gay And Bad Land】(ワイルドアームズVより)

初めましてな方もそうでない方も今晩は。へたれ執筆、兼へたれ絵師のセレスです。
さてさて、この度は小説の詳細を発表すると共に、作者自身からのネタバレ話なんかをしていきたいと思います。
この小説……タイトル無ぇ(黒服連行

まずは第一話【繋がり〜link】
拙い文章と構成で、読む度に荒が見つかるという、顔から火の出るようなお話です(今でもそう大差無いって
主人公――黒月と言う少年がレイヴンになろうと志し、それから色々な人々との出会いのお話です。
やはり纏めきれてないっす(口調変
試験会場でデュランと言う良き仲間、謎の多い十傑セレスティアルスター、オペレーターティナ、ひっそりオペレーターとなった幼馴染のクレスとの出会いがあり、これからの小説の…まあ、前置きみたいな話です。

さてさて、ここで第二話【物語の始まり〜Reven fry to the spring sky】
長ったらしいったらこのタイトル。季節は春。
空に羽ばたくレイヴンを書いた繋ぎのお話で、ここで初めて黒月の姉のアリア・レインベルこと赤薔薇が登場します。
ひっそりとセレス機――Meteor(ミーティア)の戦闘シーンもありますが。

前置きが終了し、本題の第三話【邂逅〜Time say good-by】
少々時間が過ぎて初夏の話。
タイトル通り、主人公とその周りに付き添う人物、黒月の因果関係、家族との邂逅をモチーフにして書きました。
因みに邂逅と言う意味は『思いがけなく出会うこと。巡り合い』と言う意味です。
登場人物が少々増え、アリア・レインベル、ロア・C・バンズディン、エディフィル・レインベルと主人公の周りの人物も増えます。
しかしながらこの物語、中盤ちょっと暗め。
目的を見失い迷う主人公が、姉そして父に新たな翼を手に入れるこの物語、邂逅の趣向が反映できてましたでしょうか(絶対できてません

ひとまず物語の前半が終了し、番外編の第四話【懐かしい日々〜Perfect Blue】
作者が何を血迷ったか、いきなり過去にぶっ飛んで、三年前の秋の話です(人事?
天真爛漫な主人公の姉アリアと、エクストリームな青年ロアの話です。一部恋愛に走ってますが、お題は守れなかった約束、という感じです。
あー、なんか…後半暗いね(作者の捻くれた性格のせいです

この後、主人公黒月とその因果の宿敵であるダンテとの最初で最後の戦いが始まります。
もう少々登場人物を増やそうと思ってたり。

『物語作成に当たって第二話から付け始めたサブタイトル』
もしかすると気づかれた方もいらっしゃるかも知れませんが、某ゲームのBGMタイトルが混じってます。
物語に合うよう配慮してたつもりとかなんとか
曲は携帯の着メロなんかで聞けることができると思います。
ほとんどスクウェアエニックスのBGMです(一部歌手あり)ので、検索してみると取れるかも。
こちらが拝借したBGM一覧です(タイトルの古い順から

二話
精霊と薔薇――聖剣伝説U(以下聖剣)主人公の村より

三話
魔降臨連鎖概説――ヴァルキリープロファイルより
Eyes on me――ファイナルファンタジー[(テーマ曲より
懐かしい歌――聖剣 Legend of Mana(タイトル曲より

四話
瞳の住人――L'Arc-en-Cielより
血も涙も荒野で乾いてゆけ――ワイルドアームズVより
愛に時間を――聖剣U(最終ダンジョン曲より
天使の恐れ――聖剣U(タイトル曲より

こんな所でしょうか。
三話Vol.17と四話Vol.6の『青は藍より出でて、藍より青し〜Blurry Eyes』は漢文で有名な故事成語から、瞳の色をもじってつけました。『弟子が師よりも優れている例え、出藍(しゆつらん)。出藍の誉れ』という意味があります。
Blurry Eyesは私の好きなL'Arc-en-Cielの曲からです。

You are no where
You are no←w→here
You are now here
三話で使われてるこの言葉は、私の好きな小説家の甲田学人先生の言から拝借致しました。

続きましてキャラの裏話を、と言いたいところなのですが、字数が来そうなので簡略した紹介を

主人公
黒月・レインベル――座右の銘は月夜叉姫です。小説ではアレですが、かなりのカリスマ性がある……という設定です(弱気
少々一般常識に欠落があるのが味だったり。イラストデザインはオリジナルです。結構苦心したとか(マヂに開き直って女装化させまくってたのは言わない方向で

クレス・ラインハート――座右の銘は月下氷人(彼女いるくせに…)小説で黒月がメインなので影が薄いですが、かなりの謎と複雑な過去を含んでるとか。実は黒月の格闘術はクレス直伝です。描きやすいよ。君(謎

デュラン・アドワード――座右の銘はハードボイルド(うわ、適当)作者的に結構ビックリキャラです。ここまで成長するとは思ってませんでした(いや…大体の人物そうですが、こやつは飛び切り…
長男である著者は頼れるナイスガイな兄貴に憧れており(なにそれ)そんな兄がいたらいいなぁと半分願望交じりのキャラです。今では単なる殴られキャラに成り下がってたり

ティナ・リアリーフ――座右の銘は華です。ほんとは黒月のオペレーターに考えてたんですけど……クレスの立場なくなるんで急遽デュランに配属してしまいました。イラストは描き易く、自分の中ではかなりのお気に入りキャラです。

セレスティアル・スター――座右の銘は天上の光。こっちがレイヴン本名です。本名は別にありますけどね。
あ、因みにここで明言を。ぶっちゃけて小説のこのキャラと著者は一切何等関係ありません。ってかコイツが私だったら人格崩壊起こしてますよ(真顔
倭人の青年で、刀好き(アブねぇ…)黒月編が終了した際、こいつの番外編をやろうかと企んでます。

アリア・レインベル――座右の銘は傾国の美姫(嘘だ…)。本編ヒロイン登場までの華役です。何時も笑顔を絶やさない彼女です。豆知識ですが、絶えず微笑を浮かべる人は相当な苦労人とか。
このアリアという名、FFYでお馴染みのオペラ――アリアからもじってつけてます。曲もお気に入りとか。モデルもFFYのセリスです。性格違いますが(重要

ロア・C・バンズディン――座右の銘は遠恋の人。煙草の似合うクールビューティーです。自分の中では小説中で一番好きなキャラの一人で、セレスとは縁があり、実は知り合いです。
モデルはオリジナルで。描いてると格好良く見えるのでお気に入r(削除


人物紹介も、この辺で。あとがきはこれにて終了です。長々とした下らん乱文にここまで付き合っていただきありがとうございます(一礼
私の小説の中で、何か読者の心に残る物がありましたら幸いでございます(深々と一礼


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